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1.膵臓(Pancreas)

 膵臓は長さ15cm程度で胃の後下部にあります。膵臓から膵液を分泌する主膵管は総胆管と合流し、十二指腸乳頭部に開口しており、副膵管はその上部に開口しています。膵臓では腺房細胞(Acinar cells)によって多くの消化酵素が産生され、膵管から十二指腸へ分泌されます。膵臓はまたホルモンを産生する場所でもあります。膵臓内にはランゲルハンス島(islet of Langerhans) と呼ばれる細胞集団があります。その中のアルファ細胞グルカゴン(Glucagon)という血中グルコース濃度(血糖)を上昇させるホルモンを産生します。またベータ細胞インスリン(Insulin)を産生し、血中グルコース濃度を低下させます。デルタ細胞はこれらのホルモン分泌を調節するソマトスタチン(Somatostatin)を分泌します。

糖尿病(Diabetes mellitus): 遺伝要因や肥満、ストレス等によってインスリン分泌低下や作用低下が起こり、血糖値が上昇します。糖尿病にはインスリン依存性のI型と非依存性のII型糖尿病があります。

膵液(Pancreatic juice)

       酵素           機能
トリプシノーゲン(Trypsinogen) 活性化されてトリプシンになり、蛋白をペプチドに分解する。
キモトリプノーゲン(Chymotrypsinogen) 活性化されトリプシノーゲンになる。蛋白をペプチドに分解する。
プロカルボキシペプチダーゼ(Procarboxypeptidase) 活性化されカルボキシペプチダーゼになり、ペプチドのC末端から分解する。
膵アミラーゼ(Pancreatic amylase) 澱粉を分解する。
膵リパーゼ(Pancreatic lipase) 脂肪をグリセリンと脂肪酸に分解する。
リボヌクレアーゼ(Ribonuclease) RNAを分解する。
デオキシリボヌクレアーゼ(Deoxyribonuclease) DNAを分解する。

 膵液は弱アルカリ性の無色透明液で1日に800−1000ml分泌されます。膵液の95%以上は水分ですが、消化に重要な酵素、塩類等を含みます。特にNaHCO3は胃液の酸性を中和するのに重要です。
 膵液も条件反射や食物が口腔内に入ることによる脳相(Cephalic phase)と食物が十二指腸内に入った場合の腸相(Intestinal phase)に分泌されます。

 

 

 

 

 

2.小腸



 小腸は幽門部に続き、回盲部に終わる長さ3−4m、直径4−6cmの管状構造をしています。小腸は十二指腸、空腸、回腸に分類されます。小腸は栄養素の吸収に重要な臓器であり、栄養素の吸収面積を大きくするための構造を持っています。小腸の内壁には輪状ひだがあり、輪状ひだには多数の絨毛(Villi)におおわれています。さらにそれぞれの絨毛を構成する細胞の表面には微絨毛(Microvilli)があり、栄養素の吸収面積を単なる管状構造に比べ約600倍拡大しています。
 小腸に入った食物は腸管の運動によって消化・吸収が促進され、大腸の方へ輸送されます。

 

 

 

 蠕動運動(Peristalsis):小腸は内側の輪状筋と外側の縦走筋よりなり、2層の間にはアウエルバッハ神経叢があります。小腸の輪状筋の収縮は口側から肛門側へ秒速1−2cmの速度で向かい、食物を運びます。




 
 振子運動(Pendular movement)
:比較的近い場所の縦走筋が収縮と弛緩を交互に繰り返し、食物を混和します。速度は4−5cm/秒です。

 分節運動(Segmenting mevement):比較的近い場所の輪状筋が収縮と弛緩を交互に繰り返し、食物をよく混和します。

腸液

    酵素        機能
エンテロキナーゼ(Enterokinase) トリプシノーゲンをトリプシンにする。
マルターゼ(Maltase) 麦芽糖をブドウ糖に分解する。

腸リパーゼ(Intestinal lipase)

脂肪を分解する。
ラクターゼ(Lactase) 乳糖をブドウ糖やガラクトースに分解する。
シュクラーゼ(Sucrase) 蔗糖をブドウ糖や果糖に分解する。
ジペプチダーゼ(Dipeptidase) ジペプチドをアミノ酸に分解する。
アミノペプチダーゼ(Aminopeptidase) ポリペプチドのN末端から分解する。

 腸液は1日に約2.4l程度分泌されるアルカリ性の液です。十二指腸のブルンナー腺(Brunner gland)からは主として粘液とNaHCO3が分泌され、小腸のリーベルキューン腺(Lieberkuhn gland)からの分泌液には酵素が含まれます。これらの消化酵素は小腸上皮細胞の微小絨毛付近に大量に分布しており、微小絨毛近くで消化された栄養素が効率よく細胞内に吸収されるようになっています(膜消化)。

 

 

 

 

 


小腸における吸収

 吸収のメカニズム人体に摂取された食物は消化管を通過する過程で体内に吸収されやすいかたちに消化されます。消化された栄養素のほとんどは小腸壁にて吸収されますが、吸収の機序は栄養素によって異なります。

(1)受動輸送(Passive transport):物質が細胞内外の濃度差等により勾配に従って拡散、浸透すること。濃度勾配が高いほど吸収が促進されエネルギーは必要としません。
(2)能動輸送(Active transport):物質を細胞内外の濃度勾配に逆らって輸送します。勾配に逆らって輸送するためのエネルギーが必要です。
(3)促通拡散(Facilitated diffusion):物質を輸送する担体(Carrier)が存在し、物質がキャリアーに結合して輸送される。
(4)飲作用(Pinocytosis):細胞が細胞膜にて物質を包み込むような形で取り込むこと。

 栄養素の吸収: 
(1): ヒトは1日に1.5Lの水分摂取と消化管内分泌7−8L等によって大量の水分が消化管内に入ります。このうちほとんどは小腸で吸収され、残りは大腸で吸収されるか体外に排出されます。水分の多くは浸透圧差による受動輸送で吸収されます。

(2)電解質:ナトリウム(Na+)は糖やアミノ酸と共に能動輸送され、クロライド(Cl−)は回腸で炭酸イオンと交換に能動的に輸送されます。カリウム(K+)イオンは受動的に輸送されます。カルシウム(Ca2+)は小腸上部で能動的に輸送されます。鉄(Fe3+)は2価(Fe2+)の形に還元され、能動輸送によって吸収されます。

(3)タンパク質:消化管内の蛋白分解酵素によってほとんどのタンパク質はアミノ酸まで分解され、吸収されます。アミノ酸によってはナトリウムイオンとの共輸送で細胞内に取り込まれます。

(4)脂肪:まず脂肪は胆汁によって乳化され、直径約1umの粒になります。さらにリパーゼと胆汁成分の作用でミセル(Micelles)という直径3-6nmの粒になります。ミセル中の脂肪酸とグリセロールは小腸上皮の微小絨毛から細胞内に吸収され、カイロミクロン(Chylomicrons)になり、ゴルジで分泌顆粒にパッケージングされてリンパ管へ入ります。

(5)ビタミン:水溶性ビタミンは拡散によって吸収されます。脂溶性ビタミンは脂肪とともに吸収されます。B12は内因子に結合して吸収されます。

(6)炭水化物:炭水化物は酵素のよって単糖類にまで分解され、吸収されます。

小腸における糖の吸収機構
小腸上皮の微絨毛近くの細胞膜には糖を輸送する担体(キャリアー)蛋白が存在します。ブドウ糖(グルコース)を輸送する担体はsodium-dependent glucose transporter(SGLT)と呼ばれナトリウムイオンと共に細胞内にグルコースを取り込みます(共輸送)。ガラクトースもこの担体によって輸送されます。フルクトースはナトリウムイオンを必要としない担体によって輸送されます。細胞内に取り込まれたナトリウムイオンはナトリウムポンプ(Na+-K+-ATPase)によって細胞外へくみ出されます。

 

 

3.大腸



  大腸は盲腸(Caecum)、結腸(Colon)、直腸(Rectum)よりなる長さ約1.5mの管状構造をしています。大腸からはアルカリ性のの大腸液が分泌されていますが、消化酵素はほとんど含まず、粘液によって粘膜の保護を行っています。大腸では消化はほとんど行われず、水分とナトリウムの吸収を行っています。また大腸内には多数の腸内細菌がおり、小腸で消化されなかった物質の処理を行っています。これら細菌による発酵はインドール、スカトールなどの悪臭物質を産生します。

 

 



 便秘(Constipation): 便が腸管内に長時間停滞し、水分が吸収されて排泄されにくくなります。腸管の通過障害や弛緩、痙攣等による通過障害によって起こります。

下痢(Diarrhea):いろいろな原因で便の水分がうまく吸収されないことによって起こります。細菌感染や炎症、腸管運動異常等によって起こります。

イレウス(Ileus): イレウスは腸閉塞とも呼ばれ、腫瘍、炎症、腸管癒着等によって腸内容物の通過が障害されることを言います。イレウスになると嘔吐、腹痛、排便・排ガス停止がおこり、腹部X線写真で腸管のガス像と鏡面像(Niveau)が見られます。

虫垂炎(Appendicitis): 虫垂内腔がなんらかの原因で閉塞し、2次的に細菌感染を起こします。腹痛、嘔吐、発熱等が現れます。

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