4.視覚の伝導路


 網膜からの視覚信号は視神経(Optic nerve)を通り、視交叉(Optic chiasm)に入ります。 その際、視野の右側にある物体は網膜の左側に映像として認識され、両眼からのこの映像の神経インパルスは左側の外側膝状体(Lateral geniculate)視放線を経由して左側後頭葉の視覚野に入ります。逆に視野の左側にある物体の映像は網膜の右側に映像を結び、視交叉で右側の外側膝状体を経由して右側の視覚野に入ります。

たとえば、Aの視交叉の部分で繊維が切断されると右の視野図のAのように両眼の外側が見えなくなります。Bのように左側の視神経の部分で傷害が起きると、視野図のBのように左眼の視覚が傷害されます。Cのように左側の視放線が傷害されると両眼の右半分の視野が傷害されます。

 

 

 

5.視覚の分子機構


 網膜の桿体細胞にはロドプシン(Rhodipsin)という物質が含まれています。ロドプシンはオプシン(Opsin)とビタミンA誘導体であるレチナール(Retinal)の複合体です。桿体細胞には500nmの光を最も吸収するロドプシンが分布しています。 暗所ではレチナールはシスレチナールの状態でオプシンと結合しており、桿体ではcGMP-gated Na+ channel(ナトリウムイオンチャンネル)が細胞内にナトリウムイオンを取り込み(dark current:暗電流)、Na+-K+ポンプがナトリウムを細胞外へ排出しています。この状態では抑制性のグルタミン酸がIPSPを起こし視神経へのシグナルは抑制されています。

 光が当たると桿体のシスレチナールがトランスレチナールに変わりオプシンから離れ、オプシンは cGMP-gated Na+ channelを活性化するcGMPを5'-GMPに分解します。これにより cGMP-gated Na+ channelはストップし、Na+-K+ポンプによって細胞内ナトリウムがくみ出されます(過分極)。これによってグルタミン酸の放出は止まり、EPSPが発生し視神経はシグナルが伝達されます。暗くなるとトランスレチナールはシスレチナールになり、オプシンと結合します。1光子によって活性化されたロドプシンは大量のcGMPを分解するので(光信号の増幅)、桿体細胞は非常に光に敏感です。

色覚(Color Vision); 錐体細胞には3種類のヨドプシン(Iodopsin)があります。ヨドプシンはレチナールは共通ですが、結合しているオプシンはアミノ酸配列がちがい、青(420nmに吸収のピーク)、緑(531nm)、赤(558nm)の3種類があります。これら3種の錐体細胞によって色を感じることができます。人が見える色は赤、青、緑の3種類の色の混合です(3原色)。オプシンはG蛋白共役受容体の1種です。

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