腎臓ではさまざまな物質が排泄され、また再吸収されます。糸球体では直径4ナノメートル以下の電荷を持たない物質は自由に通過しますが、8ナノメートル以上の物質は透過しません。また、糸球体を構成する毛細血管壁はマイナスの電荷を持つので、マイナスの電荷を持った分子は通過しにくく、プラスの電荷を持った物質は透過しやすい傾向があります。また濃度勾配によって受動輸送される物質やATPのエネルギーを使って能動輸送される物質もあります。

1)水の再吸収: 糸球体で1日に濾過された水は糸球体濾過量(GFR)から110ml/min X 60 min X 24 hrs =158リットルにも及びますが、実際の尿量は1リットル程度ですので、濾過された水のほとんどは再吸収されています。近位尿細管では約70%の水が再吸収されます。これは細胞膜上にあるアクアポリン1(Aquaporin-1)が関与しています。ヘンレ係蹄では上行脚では再吸収は行われませんが、下行脚で約15%の水が再吸収されます。さらに遠位尿細管では約5%の水が再吸収されます。集合管での水の再吸収には下垂体後葉で産生される抗利尿ホルモン(ADH)=バソプレッシン(Vasopresin)が関与しています。下垂体よりバゾプレシンが分泌されると集合管の管壁細胞膜にあるバゾプレシン2受容体に結合し、水のチャンネルであるアクアポリン2蛋白が細胞膜に移動します。アクアポリン蛋白は水の吸収を促進します。

尿崩症:バゾプレシンの分泌が低下すると細胞膜上のアクアポリン蛋白数が減少し、水の再吸収が障害されます(尿崩症:Diabetes insipidus)。尿崩症になると1日の尿量が増え、多尿になります。

 対向流増幅による水分再吸収:ヘンレ係蹄では対向流増幅(Countercurrent Multiplier)機序によって水分が再吸収されます。係蹄の下行脚と上行脚では尿が反対方向に流れています。下行脚の壁は水は通過できますが、ナトリウムなどのイオンは通過できません。逆に上行脚は水分を透過しませんが、ナトリウム、カリウム、塩素イオンはナトリウム-カリウムポンプによって能動的に外にくみ出されています。このポンプによって周囲髄質組織の浸透圧が高くなります。最初、浸透圧300mosm/kg程度で下行脚より流入した尿から高浸透圧の外部組織のために水分が再吸収され、髄質深部では1200mosm/kgの高浸透圧となります。やがて上行脚に入るとイオンが吸収され、上行脚を出る頃には低浸透圧に戻っています。

 

2)ナトリウムの再吸収 ナトリウムイオンはほとんど(99%以上)が濃度勾配に従って尿細管や集合管で再吸収されたり(受動輸送)、能動輸送によって再吸収されます。ナトリウムイオンは単体で吸収されるだけでなく、アミノ酸、グルコース、水素イオン、塩素イオン、リン酸等の物質と共に輸送されます。細胞内に取り込まれた過剰のナトリウムイオンはNa+-K+-ATPaseによって細胞外に排出されます。近位尿細管で約70%、ヘンレ係蹄まででは90%以上が再吸収されます。

3)グルコースの再吸収: 尿細管に排泄されたグルコースはほぼすべて近位尿細管で再吸収されます。尿細管中のナトリウムイオングルコースは共通の担体であるSGLT(Sodium-dependent glucose transporter)に結合し、細胞質中に運ばれます。さらに細胞質中に運ばれたグルコースはGLUT (Glucose transporter)によって細胞間質(血管)に輸送されます。細胞内に取り込まれたナトリウムイオンはNa+-K+-ATPase(ナトリウムポンプ)によってATPのエネルギーを使って細胞外にくみ出されます。同様の機構によるグルコースの吸収は小腸の腸管にも見られます。

4)アンモニアの排泄: 尿細管細胞内のグルタミンからグルタミナーゼという酵素によってグルタミン酸とアンモニウムイオン(NH4+)が生成されます。さらにグルタミン酸はグルタミン脱炭酸酵素(Glutamine dehydrogenase)によってαケトグルタル酸とアンモニウムイオンになります。アンモニウムイオンはアンモニア(NH3)の状態で細胞膜から尿細管中に出て、水素イオンと反応してアンモニウムイオン(NH4+)に戻り、排泄されます。

 蛋白尿(Proteinuria): 通常は尿中には蛋白は検出されませんが、腎障害やなんらかの原因で蛋白(アルブミン)が検出されることがあります。これを蛋白尿といいます。蛋白尿は通常マイナス電荷を帯びている糸球体壁の電荷が障害され、蛋白が尿中に流出するためと考えられています。ネフローゼ症候群、腎炎等によっておこります。

血尿(Hematuria): 正常では尿中に赤血球は検出されませんが、腎炎等で赤血球が見られるようになります。

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