D.中脳・橋・延髄

中脳は前脳と菱脳の間にあり、第3,第4脳神経核、大脳脚(cerebral peduncles)、黒質(substantia nigra)、被蓋(tegmentum)、中脳蓋(tectum)等の部分を含みます。大脳脚は皮質脊髄路の経路です。黒質はメラニンを含む黒灰色の核で運動機能に関与し、視床や基底核へ信号を伝達します。被蓋は血管に富むため赤く見える赤核を含みます。赤核は他のほ乳類では筋肉の協調運動に重要です。中脳蓋は上丘(superior colliculi)と下丘(inferior colliculi)に別れ、上丘は動く物を眼で追ったり視覚的な注意に関係があります。下丘は聴覚情報の伝達に関与しています。中脳には光反射、眼瞼、角膜反射等の眼球反射の中枢があります。 
 は中枢および末梢からの神経線維経路や中継点となっています。橋には第X神経核や第Y、Z、[神経核(延髄との境界)があります。
 延髄は腹側部に錐体(pyramids)があり、錐体路の経路となっています。錐体の外側にはオリーブがあり、オリーブ核を含みます。また、第\、]、]T、]U神経核があります。延髄には、心拍数を調節する心臓中枢、血管を収縮・拡張させる血管運動中枢、呼吸を調節する呼吸中枢などがあります。


網様体(Reticular formation): 脳幹全体に存在する神経細胞・繊維群で脊髄と視床、視床下部、大脳皮質等を結んでいます。
 網様体は

(1)運動や姿勢、バランスの調節等の運動調節。
(2)心血管系や呼吸中枢による生命の維持。
(3)感覚信号を受け、視床を介するまたはバイバスし、大脳皮質を賦活する系による意識レベルの保持。
(4)身体の痛覚情報のブロック。 等の機能を持っています。








E.小脳(Cerebellum)


小脳は左右の小脳半球虫部からなります。小脳半球は前葉と後葉に分かれています。小脳の断面図を見ると厚い皮質層と樹状の髄質より構成されているのがわかります。小脳皮質は外側の分子層と内側の顆粒層に分かれ、分子層には特徴的な形態のプルキンエ(Purkinje)細胞が1列になり並んでいます。この細胞の軸索突起は大脳皮質や脳幹へ遠心性繊維を送っています。

 小脳は不随意運動の調節や協調を行います。大脳からの運動のシグナルは脊髄を下行して筋肉に伝達され、そのフィードバック情報が筋肉の受容器から中枢へ伝達されます。小脳(プルキンエ細胞)はこれらの情報を被殻して、運動が意図どおりに行われているかを解析し、両者に解離があれば大脳皮質や脳幹にシグナルを送り、運動を補正します。

2.脳波(EEG)


脳波(Electroencephalogram(EEG))
 脳の活動は頭皮に電極をつけることにより50マイクロボルト程度の活動電位の総和として検出できます。これを脳波といいます。脳波はひとの意識レベルによって異なったパターンを示します。

(1)覚醒時脳波:意識が清明なときにはベータ波(β波)と呼ばれる14−30Hzの波が見られます。
(2)安静時脳波:安静閉眼時には、10Hz前後の波が見られます。これをアルファ波(α波)と呼びます。
(3)α抑制:安静閉眼時にあらわれるアルファ波は開眼することによって抑制され、再び閉眼することによってアルファ波があらわれます。これをアルファ抑制といいます。異常脳波:脳波は薬物服用、代謝異常、神経疾患等さまざまな原因によって影響を受けます。脳波を検査することによって脳の機能や状態をモニターすることができます。たとえば全身けいれんをともなうてんかん発作では高振幅の波がみられます。



3.脳波と睡眠


ヒトは人生の3分の1(1日24時間のうち平均8時間)を眠ってすごします。睡眠は眠っているか起きているかだけではなく、いくつかの段階に分かれ、1晩のうちにこれらのステージを何回も繰り返しています。睡眠は脳波によっていくつかのステージに分類されます。

(1)ステージ1:入眠の初期のうとうとした状態ではアルファー波は消失し、4−7Hzの鋭波(シータ波(θ波))が見られます。
(2)ステージ2:睡眠がすすむと12−14Hz前後の紡錘紡錘波や0.5秒以上の持続をもつK複合が見られます
(3)ステージ3:さらに眠りが深くなるとデルタ波(δ波)と呼ばれる振幅の大きい遅い波が主体となってきます。これは0.5−3.5Kzぐらいの波の高振幅徐波です。ステージ3では20−50%をデルタ波が占めます。
(4)ステージ4:このステージでは50%以上をデルタ波が占めます。
ステージ1から4をノンレム睡眠とも呼びます。
(4)レム睡眠期:睡眠がすすむと速い眼球運動(Rapid Eye Movement:REM) を伴う入眠期の脳波を示す時期があり、抗重力筋の緊張が低下しています。この段階をレム睡眠期といいます。レム睡眠期では夢をみることがあります。レム睡眠は数分から数十分続きます。
 1晩のうちにノンレム睡眠とレム睡眠は約90−120分の周期で繰り返されます。
 睡眠のメカニズム:睡眠がどのようにして起こるのかははっきりわかっていませんが、プロスタグランディンという物質の関与が考えられています。
かなしばり?:睡眠中にからだが動かないということがありますが、これはレム睡眠の時期(体の筋力低下)と関係しているという説があります。


異常脳波:(1てんかん(Epilepsy):交通事故やその他の原因で脳に傷害が起こると全身けいれんや、精神症状を伴う(精神運動発作)てんかん発作が起こります。この病気のひとの脳波には棘波(Spike)が現れることがあります。。

「ビジュアル生理学」のTOPへ