蝸牛の断面図をみると、三つに分かれており、それそれがリンパ液で満たされています。一番上が前庭階(Scala
vestibuli), その下が蝸牛管(Cochlear duct),一番下が鼓室階(Scala
tympani)です。蝸牛管の下壁は基底膜と呼ばれ、基底膜上にはコルチ器官(Organ of Corti)があります。あぶみ骨に伝わった音は前庭窓(vestibular
membrane)を振動させ、振動は前庭階から鼓室階を伝わります。その際に基底膜(basilar membrane)を振動させ、この振動は聴覚の受容器である基底膜上の有毛細胞(hair
cell)を興奮させます。有毛細胞は外側に3−4列(外有毛細胞)、内側に1列(内有毛細胞)並んでいますが、90−95%の蝸牛神経終末は内有毛細胞と連絡しています。聴覚にとって内有毛細胞は非常に重要であり、外有毛細胞は異なった音程の音に対する感受性を調節する働きを持つと考えられています。
音刺激による基底膜の振動は最高1秒間に20000回(ヒトの聞きとれる最高音)に達します。音程を判別できるのは音の周波数によって基底膜の振動する部位が違うからだと考えられています(聴覚の場所説(Place
theory of hearing))。前庭窓(アブミ骨)に近いところの方が高い音に対して振幅が大きく、アブミ骨から遠い場所では低音に対して振幅が最大になります。
聴覚検査: 純音オーディオメトリー(Pure tone
audiometry):低周波数(125Hz)から高周波数(8000Hz)の純音を聞かせてその音の聞こえる強さを測定します。気導と骨導の聴覚検査を行うことによって感音性と伝音性難聴を区別できます。感音性難聴では蝸牛や伝導路に障害があるので、気導、骨導とも同様に障害されます。伝音性難聴では外耳、中耳の異常なので、気導は障害されますが、骨導はあまり障害されず、両者の結果に解離が生じます。