ビタミンはビタミンは身体内でおこるさまざまな化学反応に必要な栄養物質です。ビタミンはその特性から水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンに分類されます。水溶性ビタミンにはB群、やビタミンC 脂溶性ビタミンにはA,D.E,Kなどがあります。

1.水溶性ビタミン

 ビタミンB1(チアミン:Thiamin): 活性型はチアミン二リン酸で、アルファケト酸の脱炭酸反応(クエン酸回路(TCAサイクル)におけるATP(細胞のエネルギー)産生)やトランスケトラーゼ(ペントースリン酸経路におけるNADPH(還元剤)やリボースの産生)の反応の補酵素として働きます。ビタミンB1は穀類や肉類に多く含まれます。1日所要量1.0−1.6mg
欠乏:インスタント食品、ダイエット、アルコールや全糖性清涼飲料水などによる食生活の偏りによってビタミンB1が欠乏すると上記の回路が傷害を受け、血中の乳酸やピルビン酸の濃度が高くなります。人体では大量の糖質を代謝する神経や筋肉に影響が出ます。
(1)脚気(Beriberi): 神経炎、疲労感、浮腫(衝心脚気)等の症状があらわれます。
(2)ウエルニッケ脳症:アルコール多飲で偏食等によって意識障害、運動失調等があらわれます。

 ビタミンB2(リボフラビン:Riboflavin): 活性型はフラビンモノヌクレオチド(FMN)フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)で、さまざまな酸化還元反応に関与しています。黄色のビタミンで大量に摂取すると尿中に排泄され、尿が黄色くなります。牛乳や卵に含まれます。1日所要量1.2−1.7mg
欠乏:口唇炎、舌炎、脂漏性皮膚炎等





 ビタミンB6(ピリドキシン:Pyridoxine): B6はピリドキシン、ピリドキサールリン酸、ピリドキサミンりん酸の混合物ですが、活性型はピリドキサールリン酸です。アミノ基転移反応(トランスアミナーゼ)や脱炭酸反応、グリコーゲン分解酵素の補酵素として作用します。1日所要量3−4mg
欠乏:ビタミンB6が欠乏すると、口唇炎、皮膚炎や神経炎が起こります。


 ナイアシン(Niacin): ニコチン酸とも呼ばれ、ニコチン酸とニコチンアミドが含まれます。活性型はニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)です。NADはクエン酸回路でのATP産生等に必要で、NADPは生体内でのさまざまな物質合成の際の還元剤として使われます。肝臓、落花生等に含まれます。アミノ酸の1つであるトリプトファンからも少量が生成されます。1日所要量13−19mg
欠乏:ナイアシンが欠乏するとペラグラ(Pellagra)と呼ばれる病気になり、痴呆、下痢、皮膚炎等を起こします。

 ビタミンB12(コバラミン) コリン環の中にコバルトイオンを含む構造を持ち、赤色を呈しています。活性型はメチルコバラミンとデオキシアデノシルコバラミンで、前者は葉酸のメチル基転移による核酸合成、後者はプロピオン酸からの糖新生に関係しています。ビタミンB12は植物には含まれず、腸内細菌や動物(肝臓)に多く含まれます。完全な菜食主義者はこのビタミンが欠乏することがあります。またビタミンB12は胃粘膜の壁細胞が分泌する内因子と結合して体内に吸収されるため、胃切除等によっても欠乏症が起こります。
欠乏:悪性貧血(巨赤芽球性貧血): 核酸合成傷害によって血中に巨赤芽球と呼ばれる大きな血球細胞が現れます。


 

 葉酸(Folic acid) プテリジンにパラアミノ安息香酸とグルタミン酸が結合したもので、活性型はテトラヒドロ葉酸(THF)です。THFは1炭素基(メチル基、メチレン基、ホルミル基、ホルムイムノ基など)の転移に関与しています。肝臓、ほうれん草等に含まれます。
欠乏: 葉酸が欠乏するとビタミンB12のメチル基転移反応の障害と同様に巨赤芽球性貧血を起こします。

 

 ビタミンC(アスコルビン酸) 還元、抗酸化作用、コラーゲン生成等に関与するビタミンです。哺乳類の多くはビタミンCを体内で合成できますが、ヒトなどの霊長類、鳥類、魚類などはL−グルノラクトンオキシデースという酵素を持たないので、合成できません。 果物や野菜に含まれます。
欠乏: ビタミンCが不足するとコラーゲン合成不全によって壊血病になり、歯肉や皮下出血等が起こります。

2.脂溶性ビタミン

ビタミンA レチノールは動物に含まれるほか、にんじんなどの植物にプロビタミンであるベータカロチンとして含まれています。ベータカロチンは酵素の働きで2分子のレチノールになります。眼球の網膜には光(明るさ)を感じる桿細胞があり、この細胞はレチナール(レチノールの異性体)とオプシンという蛋白質が結合したロドプシンを持ちます。細胞に光があたるとロドプシンはレチナールとオプシンに解離し、神経シグナルを発生します。このシグナルが脳に伝わり、処理されることによってヒトは暗い場所でものを見ることができます。ビタミンAが不足すると暗闇で物が見えない(夜盲症)になりますし、体外に排出されにくいので逆に大量摂取すると障害を起こします。

ビタミンD 動物の皮膚では7−デヒドロコレステロールからコレカルシフェロール(ビタミンD3)が作られます。さらに肝臓で25ヒドロキシラーゼという酵素により、25位の炭素に水酸基が付加され、さらに腎臓で1ヒドロキシラーゼによって1位の炭素に水酸基が付加されると1,25−ジヒドロキシコレカルシフェロール(カルシトリオール)が生成され、活性型のビタミンDとなります。ビタミンDは小腸のカルシウム吸収促進やカルシウム代謝に関係しています。

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